報道関係

2008年(平成20年)12月25日(水曜日) 毎日新聞
 
上:倉敷チボリ公園の巨大クリスマスツリーの前で3人の思い出を語り合う(右から)江角さん、大庭さん、大谷さん=岡山県倉敷市で23日午後5時半ごろ 下:同公園で記念撮影する(右から)江角真理子さん、大庭三弥子さん、大谷知子さん。飲酒運転の犠牲になり、これが最後の写真となった=99年12月25日撮影(遺族提供)
 9年前のクリスマスの夜、倉敷チボリ公園(岡山県倉敷市)でイルミネーションを楽しんだ鳥取大生の乗った車が飲酒運転の車に衝突され、女子学生3人の命が奪われた。「娘たちが最後に見た光を、同じ悲しみを持つ遺族でそろって見たい」。事故後、寄り添い続けてきた3人の親は23日、今月末で閉園するチボリ公園を初めて一緒に訪れた。命日を前に見つめた華やかな明かりが涙でにじんだ。【小坂剛志】

「これで前向きに」
 亡くなったのは、江角真理子さん(当時20歳)▽大谷知子さん(21歳)▽大庭三弥子さん(同)。
  江角さんらは99年12月25日、「クリスマスの思い出に」と同級生計4人でチボリ公園に遊びに行った。大庭さんが運転する軽乗用車で帰る途中の26日未明、鳥取県内の国道で、対向車線から飲酒運転の男の車が飛び込んできた。「ツアーコンダクターになって海外へ」(江角さん)、「学校の先生になりたい」(大谷さん)、「大学院に進み、設計の仕事をしたい」(大庭さん)。それぞれの夢が断たれた。
 同じ悲しみを背負った遺族は、事件・事故犠牲者の遺品などの展示や講演をするなど、命の重さを伝えてきた。大庭さんの父茂彌さん(61)=福岡県前原市=は毎年、島根県に足を運び、一緒に亡くなった2人の墓参りを続けている。
 今回、チボリ公園の閉園を知った江角さんの母由利子さん(60)=島根県斐川町=が、「娘が見に行ったイルミネーションを見る最後の機会になる」と呼びかけた。由利子さんは「事故から1、2年のころはつらくて見ることはできなかった。でも、これで少しでも前向きになれる」と公園を訪れた。
 午後5時、事故の3年後に登場した高さ31メートルの巨大ツリー「光の木」のイルミネーションが点灯。クリスマス前とあって大勢の観客から歓声が上がった。
 大庭さんは「写真の中の三弥子は、本当に楽しそうだった。この華やかな雰囲気の中にいると、学生の時に友達と来たかったのがよく分かります」と感慨深げ。大谷さんの母浩子さん(52)=同=は「以前来た時は、つらくて1時間もいられなかった。でも、娘が最後に見たイルミネーションが、どんなにきれいだったのかを見たかった」と目に涙を浮かべた。
 

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