報道関係

2011年(平成23年)11月20日(日曜日) 日本海新聞
生命のメッセージ展で遺族と対面 供養続ける男性
 事故や事件で理不尽に命を奪われた人たちの等身大のパネルを飾る「生命(いのち)のメッセージ展」が開かれている、鳥取市のとりぎん文化会館で19日、12年前に娘を事故で亡くした島根県出雲市斐川町神氷の江角由利子さん(63)が、事故直後の目撃者で現場に線香を上げて供養し続けている男性と初めて対面。長年の献身へお礼を述べるとともに、事故によって受けた痛みを分かち合った。
事故で亡くなった鳥大生3人のオブジェの前で芦田さん(左から2人目)と語り合う遺族の江角さん(右)、大庭さん(左)=19日、鳥取市尚徳町のとりぎん文化会館


 
 男性は智頭町南方の日ノ丸バス運転手、芦田正博さん(46)。1999年12月26日、智頭町内で飲酒運転の車が鳥取大の女子学生4人の乗る軽乗用車に正面衝突し、江角さんの次女、真理子さん=当時(20)=ら3人が死亡した。芦田さんは通勤途中、事故直後の現場に遭遇した。

 悲惨な状況の中、芦田さんは、1人だけかすかに動いたので「一人だけでも助かってくれ」と祈った。

 

帰宅して家族に話すと、当時8歳の娘から「なぜ『全員助かってくれ』と祈らなかったの。お母さんとお兄ちゃんと私がもし事故に遭ったら、お父さんはそう願うでしょ」と言われ、後悔した。以来、毎日通勤の行き帰りに現場で車を下り、線香を上げる。季節の花を飾り、周辺を掃除する。

 江角さんと芦田さんはメールや手紙でやり取りしてきたが、直接会うのはこの日が初めて。江角さんは、この事故で娘の三弥子さん=当時(21)=を失った福岡県糸島市の大庭茂彌さん(64)と一緒に芦田さんと会った。

 「事故は遺族だけでなく、目撃した人の心もさいなむ」と気遣ってきた江角さんがお礼を言うと、芦田さんは「あの時、なぜ4人全員の命に心を寄せられなかったのか、答えが見つかるまでこれからも毎日供養を続けたい」と伝えた。

 今年、芦田さんや、江角さんら遺族にとって朗報が届いた。4人のうち1人だけ助かった女性が6月に結婚したのだ。芦田さんは「大切な命。幸せになってほしい」と願う。

 江角さんは18日朝、ツアーコンダクターを目指していた娘、真理子さんへのメッセージをしたため、会場の真理子さんのオブジェの前に飾った。「−略−あなたの子供が見たかった! でもこれからも仲間と日本中、いや世界中を旅して下さい。死してなお親孝行な娘へ どうもありがとう 母より」−。

 

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