報道関係

2010年(平成22年)11月28日(日曜日) 中国新聞
被害者3人のオブジェを設置し、メッセージ展の準備をする江角さん
江角さん命の大切さ訴え10年
 
「娘の生きた証しを残したい。死を無駄にしたくない」―。飲酒運転のトラックに衝突された事故で次女を亡くした島根県斐川町の江角由利子さん(62)は言う。事故から10年たって、花や空を美しいと感じられるようになった半面、当時を思い出し苦しくなる胸の内を抱える。そんな心の葛藤の中、命の大切さを伝える講演活動などを続けている。12月1日まで犯罪被害者週間。
  2001年から、県内の中学校や高校で「生命のメッセージ」と題して講演する。県外の刑務所で、受刑者と職員向けに1日2回の講演をこなすこともある。事件事故で亡くなった人をかたどったオブジェを展示する「生命のメッセージ展」も各地で開く。
 「元気があっていいわね」と被害者支援のスタッフによく言われるという。だが、理解されていないと思い、傷つく。「事故から何年が過ぎても、講演会で話すのはつらい」と吐露する。「あの日」を思い出さなければならないからだ。
 1999年12月26日未明、当時鳥取大3年だった次女真理子さん=当時(20)=は、友人3人とのドライブ中に事故に遭い、亡くなった。飲酒運転のトラックはセンターラインを越えて衝突してきた。
 事故直後、食べられない、眠れない日々が続いた。「夜遅くに女の子が出かけるのが悪い」「ほかにも子どもがおってよかったね」―。周囲の心ない言葉に何度も傷ついた。そんな時、全国交通事故遺族の会に出会った。遺族と悩みを分かち合い救われた。「あのままだったら悩みを抱え込み、加害者を恨むだけで人生が終わっていた」と話す。
 県内の被害者支援も進み始めた。昨年4月、島根被害者サポートセンターが設立。悩み相談や裁判傍聴の付き添いなどを実施している。県警は、江角さんの講演活動の負担軽減のため、本年度から警察音楽隊の中・高校での演奏会や非行防止教室などで、遺族の手記を朗読している。
 

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