報道関係

2008年(平成20年)2月12日(火曜日) 島根日日新聞
 事故や犯罪で命を失った人たちの背と同じ高さの人型のオブジェ「メッセンジャー」と、その人が生前愛用していた靴などを展示し、命の重さを訴える「生命のメッセージ展」が、今年九月、山陰地方では初めて、出雲市で開かれる。九日から、そのプレ展示が斐川町立図書館で始まった。展示を企画したのは、出雲開催の実行委員会メンバーで同町の江角由利子さん(59)と、大谷浩子さん(52)。二人とも悪質な交通事故の被害で愛娘を失った。
 江角さんの二女真理子さん(当時20)と大谷さんの長女知子さん(当時21)は、鳥取大学の三年生だった一九九九年十二月二十六日、図書館の司書教諭の免許を取るための集中講義を受けた後、友人四人で車に乗り合わせ、岡山県倉敷市のチボリ公園にイルミネーションツリーを見に出かけた帰り、飲酒運転で反対車線にはみ出してきた暴走車両に激突され、同乗の同大生、大庭三弥子さん(当時21)と共に命を奪われた。大谷さんは、「知子はすごく気持ちの優しい子で、何にでも前向きだった。親にとって子は全て。夢、希望、未来が一瞬にして断ち切られた思いだった」と語る。
 突然理不尽に我が子を失った悲しみとやりきれなさ、今でも当時のことがフラッシュバックのように頭をよぎるという江角さんは、飲酒運転の暴走車に長男を奪われた神奈川県在住の造形作家、鈴木共子さん(58)と出会い、共に飲酒事故の厳罰化を求める活動に携わる。同時に、鈴木さんが始めた生命のメッセージ展に参加し、同じような境遇に置かれた遺族と互いの気持ちを語り合ううちに、聞いてもらえる喜び、癒しを感じた。
 斐川での展示が始まる前日の八日は、真理子さんの二十九回目の誕生日。江角さんは、「生きていれば結婚して子どももいたかもしれない。事故さえ起きなければ、普通のおばあちゃんになった私と、お母さんになった娘の人生があったかもしれない」と語る。「真理子の生きた証を残したい」と活動する中で出会った同図書館の白根一夫館長にスペースを提供してもらい、来月二日まで生命のメッセージ展を開く。会場には、〇五年に浜田市で起きた殺人事件の被害者石川秀治さん(当時36)の写真も展示されている。
 生命のメッセージ展in出雲は、九月十二日から十四日にかけて、出雲市駅南町のビッグハート出雲で開かれ、全国の百三十体のメッセンジャーと、その人の遺品の展示、遺族によるミニ講演会、鈴木さんの活動を映画化した「0(ゼロ)からの風」の上映などが予定されている。
 江角さんは、「メッセンジャーの声なき声、遺族が書いた文章の裏まで見て感じて欲しい。人は一人で生きているのではなく、あらゆる条件がそろって生かされていることを思い出し、自分も人の命も大切にする世の中になって欲しい」と、同展への思いを語った。
 江角さんら実行委員会では、同展で会場に飾るハート型を募集している。色は赤で、素材はフェルトや色紙を切り抜いたもの、毛糸で編んだものなど何でも可。大きさも自由。送り先は江角さん宅(〒699−0613 斐川町神氷1584)。
 


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